夏休み クリスタル・トリオ・アンサンブル 特別コンサート

Crystal Trio Ensemble Concert
 
透き通る音色ガラスで織り成すハーモニー

箱根ガラスの森美術館では、ヴェネチアで活躍中のガラス楽器の演奏家を招きミュージアムコンサートを開催いたします。
グラス・ハープ、ベロフォーン、グラス・パンフルートを使用する珍しいアンサンブルで、クラシック音楽などを演奏いたします。箱根の山々に響き渡る、透き通るような音色をお楽しみください。

会期

2019年7月13日から9月1日まで
(毎週水曜日休演)

 

演奏時間

11:30 〜 11:45
12:30 〜 12:45
13:30 〜 13:45
14:30 〜 14:45
15:30 〜 15:45
 
※イベント・企画等により変更となる場合がございます。
演奏は、ヴェネチアン・グラス美術館中央、ガラスの泉「LA FONTANA DI VETRO」の前で行われます。

出演者のご紹介

イゴール・スカヤロブ Igor Sklyarov
(グラスハープ)

グラスハープを使って主旋律を演奏する。Altai地方Barnaul市に生まれ。Novosibirsk州、I’Glinka音楽院で学ぶ。キャリアは“Sibir”ロシア民族オーケストラのbayan-playerとしての活動から始まる。その後、独立しソロのbayan-playerとしてロシア及びヨーロッパで活動する。1998年よりグラス演奏の技術を学ぶ。
ウラジミール・ペルミノブ Vladimir Perminov
(グラス・パンフルート)

トリオの中ではベースを担当する。彼のGlass Pan Fluteの不思議な低音はバンド全体のサウンドをしっかり引き立ててくれる。Barnal市に生まれOdessa地方の音楽院及びKrasnoyarsk芸術協会で学ぶ。Odessaregional フィルハーモニー・シンフォニーオーケストラと Altai劇場にてコメディーミュージカルの演奏に携わる。
ウラジミール・ポプラス Vladimir Popras
(ベロフォーン)

トリオの中で最も中音部となるVerrophonを演奏する。Irkutskaya地方Bratsk市生まれ。
Novosibirsk州、I’Glinka音楽院にてアコーディオンを学ぶ。
教鞭を執るとともにフォークバンドの一員としてロシア及び海外で活動をしている。2006年よりグラス演奏を始める。

クリスタルの魔法のひびき

グラスハープ、ヴェロフォン、パンフルートが奏でるヴィヴァルディ、モーツァルト、ボッケリーニの作品の数々。
グラスハープは長く輝かしい歴史を持つ楽器です。グルック、モーツァルト、ドニゼッティ、ベートーヴェンらはこの楽器の為に曲を作りました。その後、次第にその存在が忘れ去られていく中で20世紀後半になり再びグラスハープは音楽界に登場しました。イゴール・スカヤロブ率いるクリスタルトリオの演奏が“音楽とグラス”というジャンルを復活させる一役を担ったのです。
クリスタルトリオはリーダーでソリストのイゴールが珍しい楽器、グラスハープに出会ってから更にヴェロフォン奏者、ウラジミール・ポプラスとグラスパンフルート奏者、ウラジミール・ペルミノフが加わり1998年にクリスタルトリオとして結成されました。
今日では日本やアメリカのみならず、ロシアの名だたるホールで演奏しています。
彼らは有名なクラシック曲をレパートリーとして取り上げています。ヴィヴァルディ、チャイコフスキー、ベートーヴェン、バッハらの素晴らしい作品をグラス楽器で奏でると、格別な趣や深みを表現できます。繊細なクリスタルサウンドの純粋な調べは感動を呼び覚まし、作曲家たちが求めた理想的な美の世界に人を誘います。彼らは又、室内楽団やオーケストラ、オペラ歌手、ロックミュージシャンらとも共演して来ました。2006年リーダーのイゴールはヴェネチア サンマルコ広場で開催された、元ピンクフロイドのデイヴィット・ギルモアのコンサートに参加しています。
2003年からは箱根のヴェネチアングラス美術館での演奏が好評を博しています。素晴らしい聴衆と友人達に囲まれながらの恵まれた環境は、彼らにより新しく美しいひびきを奏で続けさせることでしょう。

グラス音楽の歴史

私たちを取り巻くこの世界に音楽は溶け込んでいます。水の流れ、海を渡ってくる風、手の感触、そして沈黙、そのすべてにメロディーがあります。原始の時代から人々は自然を学び、独特な音を奏でる新しい手段や道具を見つけました。
おそらく歴史上で最も珍しい楽器の一つがグラスハープでしょう。
誰もグラスハープがどうやって作られたのかを知りません。
たぶん偶然の産物でしょう。ここだけの話ですが、とある夜…誰かが偶然ワイングラスの縁をゆっくりと指でなぞっていると、思いがけず繊細で信じられないほど素晴らしい音が鳴ったというような・・・・・あたかも、人から人へと話の輪がつながり世の中に広まったのではないでしょうか。
注目すべきは、最初に登場したグラス楽器は“天使のオルガン”と名付けられた事です。ハープの形状になるまでには時間がかかりました。好奇心が強い何人かが時間をかけて、色々と違うグラスから奏でられる音を聴き比べ、組み合わせて最初のハーモニーを作り、鍵盤のように並べました。重要なのは、当時グラスが大変高価な物だったことです。
ワイングラスを楽器に使用するというのはとても勿体ないことで、現代で言うならば、ダイヤモンドで演奏するに等しかったのです。17世紀中期の歴史文書によれば、最初の曲は30個~40個の特別に調律されたグラスで演奏されたとあります。今日では、グラスの形状と容量によって調律して演奏しますが、音階を修正する必要がある場合には、水の量で調整します。
天使のオルガンのその後の経歴は困難なもので、半世紀もの間、その存在を忘れ去られていました。唯一1744年にグラス楽器がアイリッシュ人のRichard Pakrichによって再開され、“セラフ”と名付けられたカップグラスのセットを用いた演奏ツアーがイギリス各地を巡りました。
これが功を奏し、後に伝説的なオペラの作曲家で編曲家V・グルックの目に留まったのです。彼は聴衆の前で水を入れた26個のグラスを集めた、彼独自の楽器で演奏しました。
次に特記すべきは、1757年にロンドンに大使として赴任した後のアメリカ大統領、ベンジャミン・フランクリンがグラスの様式とグラス音楽の虜となり、手で演奏する楽器を改良したことです。彼はグラスを異なる直径の半球体ガラス器(鉢)に置き換え、それらを軸に通して並べた物を特別な箱に入れて水に浸しました。ペダルを踏んで軸を回転させると、半球体のガラス器が一律に水に触れ、その縁を指で触れると甘くメロディアスな音が奏でられました。この楽器が、グラス楽器の中で最も有名な「クリスタルハーモニカ」や「グラスハーモニカ」と呼ばれるものです。
グラスハーモニカは急速にドイツ、オーストリアに広まり、その他のヨーロッパ諸国やロシアでも流行りました。その後100年以上にわたり、オーケストラ必須のパートともなりました。有名な作曲家、ベートーヴェン、リヒャルト・シュトラウス、ベルリオーズ、ルービンスタインやその他多くの作曲家が音を奏でるグラスの為に特別な作品を作曲しました。その中で優れた作品の一つがモーツァルトの「グラスハーモニカの為のアダージョとロンド」でしょう。
しかしながら、100年に及ぶガラス楽器の絶頂期はガラス音楽の衰退へと移りました。
ガラス楽器は壊れやすく、修復には費用が掛かりすぎました。機械に影響と興味が注がれることとなり、半球体ガラス器は徐々にガラス板に代わり、指で触れる奏法から鍵盤に取り付けられた特殊なハンマーで演奏するようになりました。演奏はより簡単になりましたが、魔法のような音は表現できなくなりました。オーケストラからグラスハーモニカは姿を消し、チェレスタに取って代わられました。再びガラス音楽はまるで永遠かのように忘れ去られてしまいました。
しかしながら、20世紀末、新しい時代の到来と共に最も古くて、最も風変わりな楽器が蘇りました。埃まみれの倉庫の中から、音を奏でるワイングラスや水のささやき、そして歌が・・・・チャーミングで楽しませてくれる魔法のクリスタルが!

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