千の花咲くヴェネチアン・グラス

~きらめく初夏の庭園~
所蔵作品の中から「花」をモチーフにした繊細優美なヴェネチアン・グラスを展示します

会期:2023年4月22日(土)~7月9日(日)

気温の変化を捉えて毎年、花を咲かせる植物。その花の美しさが目に留まり、季節の移ろいを感じることがあります。一瞬で人々の心をとらえる花は、古くから芸術、服飾、インテリアなどあらゆるもののモチーフとして、多く用いられています。本展覧会では、所蔵作品の中から「花」をモチーフにした繊細優美なヴェネチアン・グラスを展示します。
ヴェネチアのガラス職人たちも、色とりどりの花の世界を造形や絵付け、彫刻など様々な技法でガラスに表現してきました。なかでも断面が花模様になったガラス片を用いて制作されるガラスは、器に多くの花が咲いたようにみえることから、イタリア語で千の花を意味する「ミルフィオリ・グラス」と呼ばれています。今回は、特にその技法に注目して、歴史やガラスに千の花を咲かせる制作工程にも詳しく触れながら、作品の魅力を紐解きます。
また、標高650m程に位置する箱根ガラスの森美術館では、期間中、初夏の訪れとともに新緑と花の季節を迎えます。新緑の煌めきや庭園に咲く花々、そしてヴェネチアン・グラスに表現された「花」との競演もお楽しみください。

「モザイク・グラス・ランプ」モザイク・グラス部分1970年/ランプ制作1993年 ヴェネチア ジャコモ・デ・カルロ

第1章「野に咲く花々をガラスに!ミルフィオリ・グラス」


ヴェネチアン・グラスの伝統技法モザイク・グラスは、金太郎飴のように模様の入った細長いガラス棒を制作、それを切断したガラス片を組み合わせて加熱し器を完成させます。なかでも断面が花模様になったガラス片は、器一面に花が咲いたような様子から、イタリア語で千の花を意味するミルフィオリと呼ばれています。
モザイク・グラス技法は古代ローマ時代に高度に発達し、当時は多くのガラス器が作られていましたが、帝国の滅亡とともにその制作技術は失われてしまいます。その後、ルネサンス期にヴェネチアで、ガラスビーズの装飾として使われた記録が残っていますが、大きく発展するには至りませんでした。
19世紀に空前の考古学ブームが訪れると、古代ローマ時代の遺跡から発掘されたミルフィオリ・グラスが人々の関心を集めました。これに刺激を受けたヴェネチアのガラス職人ヴィンチェンツォ・モレッティ(1835-1901)は研究を重ね、古代の技法の復元に成功します。以来、ヴェネチアではこの技法を改良し、3万色のガラスを用いてカラフルなミルフィオリ・グラスが制作されるようになります。
この章では、ミルフィオリ・グラス技法を歴史的背景や制作工程などを交えて紹介します。作品1つ1つの異なる花模様の世界をじっくりとご覧ください。

ミルフィオリ・グラス・ランプ
1910年頃
ヴェネチア フラテッリ・トーゾ工房
モザイク・グラス・ランプ
モザイク・グラス部分1970年/ランプ制作1993年
ヴェネチア ジャコモ・デ・カルロ
ミルフィオリ・グラス皿
1880年 ヴェネチア
ミルフィオリ・グラス花器
1890-1910年 ヴェネチア

第2章「ヴェネチアン・グラスに表現された花」

ミルフィオリ・グラス技法のほかにもヴェネチアン・グラスには花の表現が多くみられます。エナメル彩を用いた絵付けでは、器に色彩豊かな花が描かれ、ダイヤモンド・ポイント彫りはダイヤモンドの先端で彫刻した清楚で可憐な花がコンポートやワイングラスなどに美しさを添えています。
19世紀以降、ヴェネチアン・グラスは器本来の機能だけでなく、重厚感のある室内に華を添える装飾品として、色も器形も華美な作品が作られるようになりました。そこに不可欠な技術が、熔けたガラスを巧みに操りながら成形する「熔着装飾」です。
ヴェネチアン・グラスは、ソーダガラスという種類のガラスが使われており、熔かすと水あめのように柔らかい状態が長く保たれるという特徴があります。ガラス職人たちは、素材の長所を活かして他国のガラスとは一線を画する造形技術を発展させました。脚部に繊細な細工が施されたゴブレットやワイングラスは、芸術品としても高く評価されました。この章では、彫刻、絵付け、熔着による造形などヴェネチアン・グラスの様々な技術で作られた、花装飾の世界をじっくりとご堪能ください。

ダイヤモンド・ポイント彫りヴァンジェリスティ家紋章文コンポート
16世紀末-17世紀初 ヴェネチア
わらび形脚コンポート
19世紀 ヴェネチア
オパールセント・グラス・ソースポット
19世紀 ヴェネチア
エナメル彩ワイングラス
20世紀 ヴェネチア
モザイク・グラス・ペーパーウェイト
1887年 ヴェネチア デ・アンナ工房

※出品作品は変更となる可能性がございます。

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