Blog 箱根ガラスの森美術館ブログ

点彩花文蓋付ゴブレット
(1500年頃|ヴェネチア)
型モール、宙吹き上げ、エナメル彩、金彩
高32.5cm 口径12.1cm

濃紺の透明なガラス素地に、赤・白・緑・青色の不透明のエナメル顔料を使った点彩技法で、花文や点綴文様を坏身全体に装飾し、その背景を金泥で覆い尽くして、豪華絢爛たるルネサンス意匠に作り上げている。
脚台部や蓋には、型によって吹き出した縦の稜線が重厚な格調を作り出しており、コバルト・ブルーを素地にした金梨地がその風格を一層高めている。
ビザンチン時代に作られていた黄金七宝製の聖餐坏の形式を採用して、ラッパ状に開いた脚台部と坏身との間には、大小2つの玉飾りが玉房状に作り付けられており、そこにも縦稜と金泥の装飾が施されている。
蓋は天蓋を思わせるように中央が高く立ち上がり、その上に玉状の紐を付け、その上に無色の2段の玉飾紐を熔着している。蓋には12稜縁の鍔と、その内側下部に落し込みの合わせ部分を付けている。
典型的なビザンチンの聖餐坏の形式を採用しながら、点彩と金泥の焼付装飾には、イスラム・グラスの意匠と技法を導入している。15~16世紀ヴェネチアが、地中海文化の混淆と熟成を成し遂げていた状況がみごとにこのゴブレットに表されている。
なお、この作品は永くイタリア貴族の館に伝世されたあと、ドイツの銀行家ロスチャイルド家に伝えられていたものである。

展示作品のご紹介:船形水差

船形水差
(16世紀中頃|ヴェネチア)

透明なガラスで制作された船形の装飾水差。古代から、天然の素材を基に作られていたガラスは、含まれている不純物による発色が原因で、決して無色透明ではなかった。ヴェネチアでは13世紀末頃にこの不純物による発色を抑えるために、消色剤として二酸化マンガンを添加して無色透明なガラスを作り出し、より芸術的な作品へと昇華させていった。この船形水差も、装飾に少量の色ガラスを使用し、透明さがより引き立つように工夫されている。船のモチーフの器は、遠方からの富を運ぶ象徴として人気があり、船形水差が生み出される以前にも、カトラリー入れなどとして貴族たちの宴席を華やかに彩っていた。

所蔵作品展「ヴェネチアン・グラスとカーニバルの世界」
https://www.hakone-garasunomori.jp/event/2025_festival/
会期:2025年1月25日(土)から4月13日(日)まで
本展では、ヴェネチアのカーニバルをテーマに厳選したヴェネチアン・グラスを展示。宴を華やかに彩る装飾グラスやコンポート、今にも動き出しそうな躍動感溢れるガラスの人形のほか、現代のカーニバルを撮影した写真家 坪谷隆氏の写真作品も合わせて紹介しています。ガラス職人たちの造形技術の高さが詰まったガラス芸術作品とともに、古き良き時代から現代へと続くカーニバルの世界をお楽しみください。

カメオ・グラス朝顔文香水瓶
(1887年頃|イギリス|トーマス・ウェッブ&サンズ社)

乳白ガラスに金赤ガラスを被せかけ、さらにその上に乳白ガラスを被せた素地から、カメオ彫刻によって白い朝顔文様を彫り出している。典型的なアール・ヌーヴォー様式のトーマス・ウェッブ&サンズ社特有の香水瓶。口金と栓は銀製。

特別企画展:香りの装い〜香水瓶をめぐる軌跡〜
https://www.hakone-garasunomori.jp/event/exhibition_2024
開催中:2025年1月13日(祝・月)まで

カット・グラス魚形香水瓶
(1884年頃|イギリス|トーマス・ウェッブ&サンズ社)

魚形の香水瓶で本体は無色ガラスにカット技法が施されており、栓となる尾ひれが金属で作られている。19世紀前半、イギリスとアイルランドではカットで装飾した鉛クリスタル・ガラスの生産が急激に拡大していた。トーマス・ウェッブ&サンズ社は、この装飾で名声を高め、のちに被せガラスを用いたカメオ装飾技法で優れた作品を生み出した。

特別企画展:香りの装い〜香水瓶をめぐる軌跡〜
https://www.hakone-garasunomori.jp/event/exhibition_2024
開催中:2025年1月13日(祝・月)まで

カメオ・グラス・チューリップ文香水瓶
(1884年頃|イギリス|トーマス・ウェッブ&サンズ社)

イギリスの名門ガラス工場であったトーマス・ウェッブ&サンズ社が、イングリッシュ・カメオ(手彫りカメオ技法)の大型香水瓶を発表したのは、アール・ヌーヴォーの最盛期の1880年から90年代であった。そのため、デザインは草花を中心に、鳥や小動物などをモチーフにして、繊細なタッチで彫刻を施した表現のものが多く、香水瓶の名品として今日なお、その人気は衰えを見せていない。

特別企画展:香りの装い〜香水瓶をめぐる軌跡〜
https://www.hakone-garasunomori.jp/event/exhibition_2024
開催中:2025年1月13日(祝・月)まで

ペンダント形香水瓶
(1870年頃|フランス)

模造のルビーやトルコ石をふんだんに使った、イスラム宝玉細工風のペンダント形香水瓶。19世紀後半は、オリエントでの発掘がヨーロッパ社会を賑わした時代で、オリエント様式がいろいろな文化面に登場した。香水瓶のデザインにも、それを反映した作品が多く作られた。この香水瓶は、その典型的な一例である。

特別企画展:香りの装い〜香水瓶をめぐる軌跡〜
https://www.hakone-garasunomori.jp/event/exhibition_2024
開催中:2025年1月13日(祝・月)まで

薔薇水撒水瓶
(17~18世紀|スペイン)
「アルモラータ」と呼ばれるガラス製薔薇水撒水瓶。玉脚の太い脚部で、台座は外側に折り返しがある。薔薇水を入れるための大きめの口と、撒水用の4つの細いパイプがあり、撒水する場合には、瓶を逆さにすると細いパイプから少量ずつ出てくる仕組みになっている。側面には紐状の装飾が熔着されている。

特別企画展:香りの装い〜香水瓶をめぐる軌跡〜
https://www.hakone-garasunomori.jp/event/exhibition_2024
開催中:2025年1月13日(祝・月)まで

常設展示作品「お子さま用音声ガイド」
期間:2025年1月25日(土)~7月13日(日)
学芸員と対話しているような形式の分かりやすい音声ガイドです。

出演はホロライブプロダクションの博衣こより氏(子ども役)と儒烏風亭らでん氏(学芸員役)のお二人となります。

お手持ちのスマートフォンから、QRコードを会場で読み込んでください。展示作品の解説を視聴できます。独自アプリ等のインストールは不要です。普段使用されているブラウザでご利用いただけます。
※展示会場内ではイヤホンのご使用、またはスマートフォンのボリュームを下げてご利用ください。館内ではFREE Wi-Fiをご利用ください。

■5作品 合計約14分(無料サービス)

2025年初春 所蔵作品展「ヴェネチアン・グラスとカーニバルの世界」
https://www.hakone-garasunomori.jp/event/2025_festival/
会期:2025年1月25日(土)から4月13日(日)まで。

本展では、ヴェネチアのカーニバルをテーマに厳選したヴェネチアン・グラスを展示。宴を華やかに彩る装飾グラスやコンポート、今にも動き出しそうな躍動感溢れるガラスの人形のほか、現代のカーニバルを撮影した写真家 坪谷隆氏の写真作品も合わせて紹介しています。ガラス職人たちの造形技術の高さが詰まったガラス芸術作品とともに、古き良き時代から現代へと続くカーニバルの世界をお楽しみください。

プロフィール

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箱根ガラスの森美術館は、緑豊かな箱根仙石原にあるヴェネチアン・グラス専門の美術館です。

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