箱根ガラスの森美術館 特別企画展

~響き合う東西の美~ ガラス・アートの世界

会期:2022年9月28日(水)から2023年4月16日(日)まで
2023年1月10日~1月20日休館

ガラスは約4000年前に生み出され、装身具や器に始まり、鏡や建材として人々の日々の生活の中で用いられてきました。その歴史は19世紀中頃まで、優れた技術をもつ職人たちの手により築かれ、代々受け継がれた工芸としてのものでした。
しかし、第二次世界大戦後、ガラスはそれまでの職人による工芸の域を超え、作家自身の想いを表現する媒体として使われるようになります。ガラス工芸の伝統が息づくヴェネチアのみならず、個々の作家たちが自らガラスを操って創作活動を行うスタジオ・ガラス運動が盛んなアメリカや日本においても、新たな造形表現が試みられるようになったのです。
本展は前期日程と後期日程に分け、職人たちによって受け継がれた技術と伝統のガラス工芸から解き放たれ、自らの個性と自由な発想から生み出された現代作家6人のガラスによる多様な造形表現をご紹介する企画展です。個々の作家たちの文化や環境は違えど、時に互いの個性が豊かに響きあうガラス・アートの世界をお楽しみください。


後期展示 ガラスに表現される多様な自然

芸術における自然表現は、時代の変遷や文化の交流による人々の自然観の変化に影響され、古来より様々な形で試みられてきました。
東洋、特に中国では、人知の及ばない自然への崇拝などを背景に、花鳥画や山水画が10世紀頃に隆盛を極め、後に日本の自然観や美術表現の確立に寄与します。西洋でも歴史、宗教画の背景に古くから自然の細やかな表現が見られましたが、19世紀に入ると、近代化された都市部の人々の憧憬により、自然の風景を主題にした画家たちが現れます。また、19世紀末に日本文化が西洋に紹介されるようになると、日本画や工芸にみられる自然観や表現様式は「ジャポニズム」として、様々な芸術分野に影響を与えることになりました。
後期展示では自然表現をテーマに、ガラスという共通の素材で異なるアプローチを試みる3人の現代作家の作品を紹介します。
アメリカのガラス作家デイル・チフーリは、ヴェネチアでガラス技術と感性を磨き、曲線的な装飾が周囲に施されたヴェネチアン・グラスから着想を得て、花器の周囲に巻き付けられた花々から湧き上がる自然のエネルギーを感じさせる “Venetian”シリーズや、日本の生け花から着想を得た “Ikebana”シリーズを生み出しました。
一方、日本を代表するガラス作家の1人である山野宏は、海外での経験を通して自身が生まれ育った文化や自然観を再認識するに至ります。“心に安らぎを感じさせる自然の美しさ“という東洋人としての自然観を“Scene of Japan”などの作品で表現しました。
そして、平安時代に生み出された截金とガラスを融合させた「截金ガラス」を手掛ける山本茜は、『源氏物語』に代表される自然の繊細さや移ろう姿に心情を重ねた平安時代の人々の美意識を、ガラスの中で煌めく截金文様で今に伝えます。
Venetian
1989年
デイル・チフーリ
「渦」
2020年
山本 茜
撮影:鍋島 徳恭
Drawing on the vessel
2020年
山野 宏

デイル・チフーリ

(1941年~)アメリカ合衆国

ワシントン大学でインテリア・デザインを学んでいるときにガラスに出会う。その可能性に魅了され1965年にウィスコンシン大学に進み、スタジオ・グラス運動の提唱者、ハーヴィー・K・リトルトンに師事。1968年にはヴェネチアのムラーノ島に留学、ヴェニーニ工房でヴェネチアン・グラスの伝統と、チームを組んで作品を制作するスタイルに強い影響を受けた。後にムラーノ島への留学経験などを基に、1971年ワシントン州にガラス教育施設ピルチャック・グラス・スクールを共同設立。世界中のガラス作家たちの研鑽や情報交換の場として今もガラス界の発展に寄与している。
類まれな発想力と色彩、造形感覚を活かした「マキア」(1981年~)、「ペルシャン」(1986年~)、「ヴェネチアン」(1988年~)などの躍動感と生命力あふれるシリーズ作品を発表。「アメリカ合衆国人間国宝賞」(1992年)をはじめとする多数の賞を受賞し、1996年にヴェネチアで開かれた「現代ガラス造形作家国際展覧会」に招待作家として出展、2012年にはシアトル・センターに、庭園と作品が響き合う「チフーリ・ガーデン&グラス」がオープンするなど、精力的に活動している。
デイル・チフーリ
デイル・チフーリ
撮影:飯島 幸永
Ikebana
Ikebana
1997年

山本 茜

(1977年~)日本

中学生の頃より『源氏物語』などの平安文化に憧れて育つ。1996年京都市立芸術大学に入学。在学中に日本画を学ぶなかで出会った古典絵画の截金文様に惹きつけられ、平安時代に隆盛を極めた截金を独学で学び始める。2000年から7年間、重要無形文化財「截金」保持者 江里佐代子氏に師事。主に仏像・仏画の装飾に使われる截金を表現の主体にすることと、経年劣化により剥落しやすい截金を永遠の輝きとすることを追求するなかでガラスという素材に行き着き、2009年富山ガラス造形研究所に入学。ガラスの成形技術を一から習得し、截金とガラスを融合させた「截金ガラス」を創出する。2008年の日本伝統工芸展初入選以後、国際ガラス展・金沢(2013年)など、様々な展覧会で受賞歴を持つ。
試行錯誤のなかで生み出した截金ガラスは、金箔の裁断からガラスの熔融や研磨に至る全てに高度な技術と集中力が求められる。絵画や工芸の装飾方法の一つであった截金を、芸術作品に昇華させた画期的な作品は高く評価され、宮内庁や大英博物館をはじめ、多数の美術館に収蔵されている。2011年には平安時代の情緒を今に残す京都市の山内に工房を構え、源氏物語五十四帖それぞれの世界観を截金ガラスで表現した『源氏物語』シリーズをライフワークとして制作している。

山本 茜
山本 茜
源氏物語シリーズ-第十九帖「薄雲」(雪明り)
源氏物語シリーズ-第十九帖「薄雲」(雪明り)
2011年
撮影:鍋島 徳恭

山野 宏

(1956年~)日本

大学では歴史学を専攻、20歳のときに出会った北欧のガラス作品に強く魅せられガラス造形の道へと進む。世界各地で感性や技術を磨き、1991年にはスタジオ・グラス運動の発祥地であるアメリカ合衆国で、世界最高峰のガラス工芸作家に贈られるラコウ大賞をはじめ国内外での数々の賞を受賞、また作品が美術館に所蔵されるなど世界から高く評価されている。
海外で制作活動するなかで、宙吹きしたガラスの表面に厚手の銀箔を熱熔着し、銅メッキを施す独自の加工技術や、前に進み続ける自身の姿を重ねた回遊魚のモチーフが彼の作品の代名詞となる。そして1980年代末から東洋人である自分にしかできない世界観を表現した力強い作品「From East to West」シリーズを制作。近年では、移り行く日本の四季、特に現在アトリエを構える福井の豊かな自然の美しさを表現する「Scene of Japan」や「Drawing on the Vessel」シリーズなど、日々の心象風景を映し出した静けさが漂う作品制作に取り組んでいる。

山野 宏
山野 宏
Scene of Japan
Scene of Japan
2021年

音声ガイド
お手持ちのスマートフォンから、QRコードを会場で読み込んで頂くと、展示作品の解説を聞くことが出来ます。(無料サービス)
独自アプリ等のインストールは不要です。普段使用されているブラウザでご利用いただけます。
※展示会場内ではイヤホンのご使用、またはスマートフォンのボリュームを下げてご利用ください。
 

主催 箱根ガラスの森美術館、毎日新聞社
後援 箱根町
協力 箱根DMO(一般財団法人 箱根町観光協会)、小田急グループ
ARTS for the future!2
本展覧会は、文化庁 ARTS for the future!2(コロナ禍からの文化芸術活動の再興支援事業)の補助対象事業です。

※開催期間、出品作品等が変更される場合がございます。

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