ヴェネチアン・グラスが誘うグランドツアー
~遥かな時代のヴェネチア旅へ~

“The Grand Tour Invited by Venetian Glass” A Trip to Venice in a Bygone Era
「旅」をテーマにヴェネチアン・グラスを展示します。

会期:2021年12月29日(水)~2022年4月17日(日)
※2022年1月11日~1月21日は冬期休館となります。

はじめに

ヨーロッパから東方地域を結ぶ海上貿易を行っていたヴェネチアの街は、いつの時代も多くの人々で賑わっていました。
商人、芸術家や音楽家、文豪、観光客など古今東西の旅人たちは、ヴェネチアで知的好奇心を刺激され、それぞれこの街の新たな側面を見出していきます。他国から訪れた人々との交流もまた、千年にも及んだヴェネチア共和国の繁栄の一助を担っていたのです。
建国以来、往来する旅人たちの悲喜交々を静かに見守ってきた美しい街並みは、1987年に周辺の島々や潟とともに世界遺産に登録され、今もなおヴェネチアを訪れる旅人は絶えることがありません。
今回の展覧会では、「旅」をテーマにヴェネチアン・グラスを展示します。かつてガラス市場を独占する程に、世界中を駆け巡った繊細優美なガラス芸術のなかにも、この都市が培ってきた歴史の一端が映し出されています。共和国を最も輝かせた「交易」、「芸術」、「祝祭」にスポットをあて、作品とともにヴェネチアに魅了された旅人たちを紹介します。
誰もが自由に海外旅行を楽しむことが難しくなっている現在、往時の名品が、私たちを遥かな時代のヴェネチアへ誘ってくれます。

コメディア・デラルテ 20世紀

第1章 「ヴェネチア商人の旅路」

ヴェネチアの商人が活躍していた12世紀頃、陸路でも海路でも遠方へ赴くことは多くの歳月を要し、途中、食料不足や戦乱などにより命を落とす危険も伴う旅でした。東方見聞録で知られる商人マルコ・ポーロも約4年かけて目的地モンゴル帝国(元)に到着しました。
ヴェネチア共和国にとって交易は、国を豊かにするために欠かせない経済活動であり、その要を担っていた商人たちは、西洋では手に入らない磁器や高級ガラス器、絹、香辛料などを買付けるため、危険を顧みずに東方へと旅立っていきました。その甲斐あって、ヴェネチアは異国情緒漂う珍しい品々と他国の商人も集まる交易の一大中心地となり、共和国に巨万の富をもたらしました。それだけでなく商人同士の交流は、洋の東西が入り混じる国際色豊かな街と文化を創り出していきます。

点彩扁瓶 16世紀
モスクランプ形花器 19世紀

第2章 「芸術家たちの往来」

交易を通じて外国の文化や風土を柔軟に取り入れ、国際色豊かになったヴェネチアは、商人だけでなく次第に芸術を志す者たちも集まってきます。ルネサンス期のティツィアーノやヴェロネーゼらは才能を開花させ、ヴェネチアの風情を色彩豊かな絵画に表現し、現在、ヴェネチア派と呼ばれる流派を確立させました。彼らの名声はヨーロッパ各地へと広まり、ティツィアーノは、ローマやフェラーラなどイタリア半島のみならず、生涯を通じて幾度も神聖ローマ帝国やオスマン帝国などへ赴き、多くの傑作を遺します。こうした画家たちによって世界中にパトロンを獲得したヴェネチアは、交易だけでなく芸術の都としても、地位を築いていきました。その後も数世紀にわたって芸術の中心地となり、美術だけでなく音楽や演劇、文学、映像など幅広い分野の芸術家が往来し、傑作を生み出していきました。

人物行列文壺 16世紀
中空脚坏 18世紀

第3章 「旅へと駆り立てる幻想的な世界」

爛熟期を迎えた18世紀、街を賑わせていたのは、当時流行していたグランドツアーと呼ばれる国外旅行をする若者たちでした。ヨーロッパの裕福な若者が見聞を広げようと、各地の文化芸術に触れ、歴史遺産を見学するための目的地の1つがヴェネチアでした。
建築や絵画など往時の傑作のほか、彼らを魅了したのは、ヴェネチアの栄華を象徴する贅を尽くした祝祭とカサノバのように人生を謳歌する人々の暮らしでした。オペラや演劇の鑑賞に加え、盛大なカーニバルに参加し、カフェやリドット(遊興場)で友と語らう日々は、大人へと歩み出す直前の若者にとって何ものにも縛られない、夢のような時間だったことでしょう。
旅を終えて、彼らが故郷に持ち帰った品々やそれとともに熱く語られる甘美な話は、人々を次のヴェネチア旅へと駆り立てました。歴史、芸術、祝祭など人々を惹きつける力を持つヴェネチア、そこを訪れる旅人は今もなお絶えることがありません。

モザイク・グラス・ペーパーウェイト
「ヴェネチアの思い出」1887年
「ヴェネチアの花」 2021年
 下永瀬美奈子 制作

同時開催 写真展「グランドツアーへの招待」

~坪谷隆が写すカーニバルの世界~

写真:坪谷隆「優雅」

写真:坪谷隆「優雅」

ヴェネチア仮面祭 企画展・写真展 
会期:2021年12月29日(水)~2022年4月17日(日)
※2022年1月11日~1月21日は冬期休館となります。

ヴェネチアン・カーニバルを撮り続ける写真家・坪谷隆氏の作品は、現代における「グランドツアーへの招待状」です。誰もが何かを我慢し諦めている今だからこそ、日常を忘れ他の誰かになることで心を解放させるカーニバルの世界に、あなたをご招待します。
坪谷 隆(写真家)TAKASHI TSUBOYA
坪谷 隆(写真家)TAKASHI TSUBOYA
1949年 東京生まれ

学生時代より写真に興味を覚え卒業後、単身渡米New Yorkで(CFプロデュ-サー兼アートディレクター、写真家)のジョージ ナカノ、後にヴォーグ誌,ハーパースバザー誌、マリークレール誌等で活躍していた写真家のブルース ローレンスの両氏に師事。4年間のNewYork滞在後、1976年帰国。
翌年、月刊コマーシャルフォト誌(玄光社)の特集“若手海外体験派カメラマン”として表紙写真と体験記事が掲載された。後に大手アパレルメーカー、化粧品会社、雑誌広告等幅広い企業から撮影依頼をうけ現在にいたる。

※出品作品は変更となる可能性がございます。

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