ヴェネチアン・グラスが映す栄光
─ペストを乗り越えた先に─

~2021年仮面祭企画展~
「暗黒の中世」が去り、黄金時代を迎えたヴェネチア共和国の繁栄と暗く長い冬の終わりを告げる
カーニバルの文化を、ヴェネチアン・グラスと坪谷氏の写真作品を通してご紹介いたします。
 

ヴェネチアン・グラスが映す栄光 ─ペストを乗り越えた先に─
会期:2020年12月27日(日)~2021年2月28日(日)
※冬季休館日:2021年1月12日から1月22日は休館とさせていただきます

写真:坪谷隆「希望」
写真:坪谷隆「希望」

地中海の覇者であるヴェネチア共和国の栄華は、ペストの流行を乗り越えた先にありました。当時、世界初となる検疫を行い、被害拡大を防いだヴェネチア共和国の主要な産業は、古代ローマやイスラム文化圏、ビザンチン帝国のガラス技術を継承したガラス産業でした。15世紀後半には、高級工芸品としてヨーロッパのガラス市場をほぼ独占するに至ります。イスラムの影響を受けたエナメル彩や東洋の白磁を模した乳白ガラス“ラッティモ”、レースを閉じ込めたようなレース・グラスに、華麗な熔着装飾と、様々な技法が生まれ、発達し、海を越えて人々を魅了しました。
同様に、ヨーロッパ中の富豪を虜にした祝祭が「カーニバル」です。イエス・キリストに倣って節制する四旬節を前に歓楽を求めるカーニバルは、18世紀に最高潮を迎えます。身分差が明確であったヴェネチアにおいて、カーニバルの期間だけは、仮面で互いに素性を隠して娯楽に興じたのです。このカーニバルの衣装もペストによって影響を受けました。本来、春の訪れを祝う意味を持つカーニバルは、オーストリアの支配下に入った事で1779年に一度禁止されますが、1979年に復活して以降は世界中から人が訪れています。
ペストによる大災禍の後、ヨーロッパではルネサンスが起こります。封建社会が崩壊し、中世から近世、近代への道を切り開きました。「暗黒の中世」が去り、黄金時代を迎えたヴェネチア共和国の繁栄と暗く長い冬の終わりを告げるカーニバルの文化を、ヴェネチアン・グラスと坪谷氏の写真作品を通してご紹介いたします。

海上の交差路

ヨーロッパとオリエントを結ぶヴェネチアは、海を越えてあらゆる人や物が行き交うからこそ、ペストへの対策が必要でした。
ペスト禍を乗り越えた他地域との交流は、ガラス産業にも多大な影響を与え、エナメル彩を発展させ、レース・グラスなど独自に編み出した技法がヨーロッパ中を席捲します。その他、ラッティモやダイヤモンド・ポイント彫りなど、他地域の影響を受けた技法、他地域に影響を与えた技法の作品をご紹介致します。

点彩コンポート

点彩コンポート

16世紀初|ヴェネチア
レース・グラス・コンポート

レース・グラス・コンポート

17世紀初|ヴェネチア
ダイヤモンド・ポイント彫り草花文ワイングラス

ダイヤモンド・ポイント彫り草花文ワイングラス

17世紀|ヴェネチア又はネーデルランド
点彩扁瓶

点彩扁瓶

16世紀|ヴェネチア

享楽の迷宮都市

ファッションを競い、歓楽に興じるカーニバルで身に付ける仮面の中で、かつて実際に使用していた仮面が「ペスト医師」です。ペスト終息後には、死の恐怖への抵抗を表す仮面としてカーニバルに登場しました。
また、ペストの予防に用いられていた香水も発達し、富と権威の象徴としてヨーロッ仮面や香水瓶、ヴェネチア伝統の仮面喜劇「コメディア・デラルテ」の登場人物を表現したガラス人形作品などを通して、ペスト禍を乗り越えて爛熟期を迎えたヴェネチアの文化を、カーニバルからご紹介致します。

仮面劇「コメディア・デラルテ」シリーズ

仮面劇「コメディア・デラルテ」シリーズ


 
装飾花瓶形香水瓶

装飾花瓶形香水瓶 

1860年頃|フランス
道化師ボトル

道化師ボトル

20世紀|ヴェネチア

春を祝う

カーニバルの起源は、キリスト教以前の古代ギリシアのデュオニュソス祭、それを受け継いだ古代ローマのサトゥルナリア祭だといわれています。この祭りは、農耕神サトゥルヌスを祀り、春の再生を祝うものです。本来カーニバルとは、冬の死と春の再生を表現するものでした。
「暗黒の中世」と呼ばれる時代が去り、黄金時代を迎えたヴェネチア共和国の栄華 を、春の訪れの祝いに相応しい華やかな植物装飾を施したガラス作品を通してご紹介致します。

オパールセント・グラスソースポット

オパールセント・グラスソースポット

19世紀|ヴェネチア
花装飾脚ゴブレット

花装飾脚ゴブレット

19世紀|ヴェネチア
花鳥装飾脚ゴブレット

花鳥装飾脚ゴブレット

1870年頃|ヴェネチア サルヴィアーティ工房
バラ装飾脚ワイングラス

バラ装飾脚ワイングラス

19世紀|ヴェネチア
写真:坪谷隆「ヴィーナス誕生」

写真:坪谷隆「ヴィーナス誕生」

坪谷 隆が撮る
「華麗なるヴェネチア カーニバル」
ごあいさつ

水の都ヴェネチア。16世紀から変わらぬ街並みはその悠久のときを今に伝えています。毎年2月には、迷路のような街を彩るカーニバルが行なわれ、参加者は舞台の役者さながらに思い思いの衣装に身を包み、サン・マルコ広場に集います。
仮面やフェイスペインティングに隠されて、素顔をうかがい知ることはできませんが、大人だけでなく小さな子供からもこのカーニバルに参加する喜びと、熱気がカメラのファインダー越しに伝わってきました。
本場のヴェネチア カーニバルの空気、時間、そして情熱をこれらの写真を通して、日本の皆様にも感じ取って頂けましたら幸いです。
坪谷 隆(写真家)TAKASHI TSUBOYA
坪谷 隆(写真家)TAKASHI TSUBOYA
1949年 東京生まれ

学生時代より写真に興味を覚え卒業後、単身渡米New Yorkで(CFプロデュ-サー兼アートディレクター、写真家)のジョージ ナカノ、後にヴォーグ誌,ハーパースバザー誌、マリークレール誌等で活躍していた写真家のブルース ローレンスの両氏に師事。4年間のNewYork滞在後、1976年帰国。
翌年、月刊コマーシャルフォト誌(玄光社)の特集“若手海外体験派カメラマン”として表紙写真と体験記事が掲載された。後に大手アパレルメーカー、化粧品会社、雑誌広告等幅広い企業から撮影依頼をうけ現在にいたる。

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